BSプレミアム 浮世絵ツアー「中山道」より 浮世絵ツアー - NHK
木曽街道 荒井宿 名産店の図 「名物 お六櫛」
木曽の名産お六櫛といふはミねばりといふ木にて挽あかの
とれる事ミやうなる櫛なり竹のとうぐしとちがひは
さきやハらかく髪すぢのきるゝといふことなし此くしを挽
はじめたる御六といふハ容顔美麗にて忠義貞節たぐひ
まれなる女なり今かの地の人の口碑にのこれる物語を聞に
虚実ハしらずといへどもくわんぜんのいゝつたえとも給るべき
はなしなれば絵草子七冊物となして兒女の目ざましぐさとす今にいたりて
かの櫛を木曾のなにがしといふところにて売お六がごとき忠貞??
女のかゞみなれバかの地おうらいの人ハかならずたづねもとめて御の/\
女子のかしらにいたゞかしむへしかミのあかのミにあらず御のづから心のあかをもさり
きよむべきなり
文化三年丙寅夏稿成
同 四年丁卯春発行 三東京伝誌
木曾の名産お六櫛というは みねばり という木にて挽き 垢の
取れる事妙なる櫛なり 竹の唐櫛と違い 歯
先やわらかく 髪筋の切るるという事なし この櫛を挽き
始めたるお六というは 容顔美麗にて忠義貞節 類(たぐい)
稀なる女なり 今 かの地の人の口碑(こうひ)に残れる物語を聞くに
虚実は知らずと言えども勧善の言い伝えとも給るべき
話なれば 絵草紙七冊物となして兒女(しじょ)の目覚まし草(ぐさ)とす 今に至りて
かの櫛を木曾の何某という所にて売り お六が如き忠貞??
女の鑑なれば かの地往来の人は必ず尋ね求めて各々
女子の頭(かしら)に頂かしむべし 髪の垢のみにあらず自ずから心の垢をも去り
清むべきなり
写真の「お六櫛」は明治時代の名品で、こんなに細かい歯の櫛を作れる匠は
今は居ないという。