読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1242667
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中の町へ桜を植る事
花をうへる
事は寛保
元酉の年
思い付て植
はじめたりむ
かし紀文といふ
人のつれに
かなを見事
にかく人のあり
しにはいかいし
其角ととも
に後朝の時
にいたりちや屋
のていしゆ何
ぞかいて給はれ
とてすゞり
ばこを出し
ければ 紀文はめんどうに
おもひ此所小便無用と
てもかいてつかはすへしと
いいければさつそく
花を植える事は寛保元酉の年、思い付いて植え始めたり。昔、紀文という人の連れに
仮名を見事に書く人のありしに、俳諧師其角と共に後朝の時に至り、茶屋の亭主、何ぞ
書いて給われとて、硯箱を取り出しければ、紀文は面倒に思い「この所に小便無用」と
でも書いて遣わすべしと言いければ、早速
はかみをいだし
かなにて此所小べん
むやうとかきける
そばへ其角ふでを
そへで花の山と
かきけるとぞ
まことに名人の
なす所しぜんと
一句となれり
此所小便無用
花の山
今十ミ(?)町
何がしの
一ぢくと
なり たり
端紙を出し、仮名にて「この所に小便無用」
と書きけるとぞ。誠に名人の為す所、自然と一句となれり。
「この所小便無用花の山」今??町・何某の一軸となりたり。