仮想空間

趣味の変体仮名

猫鼠合戦

 

子年だから鼠を応援しながら読んでいましたらまさかの顛末が唐突に。目が点になりつつちょっと笑い初め。謹賀新年めでたいめでたい。

 

 

猫鼠合戦

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541113


5

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猫又といふもの
あり ほふ/\゛
のねこを
かたらい
なかにも
ぶちねこ
くろ
あか
みけ
きじ しろ
とらねこ
なそと
いふごう
ねこ

をあつめ よに
いふよふ 国にとら
ぞく いへに鼠 といふ
ねづみおふく
はびこる
ねこなきが
ごとくなり
よの鼠を
ほろぼさん と
はかりける

「またゝび」
「家内安全」

「おれか
いふこ

うへに
あるぞ
よ がつてん か

「さよう/\ /\/\

 

猫又というもの有り。方々の猫を語らい、中にも斑猫、
黒、赤、三毛、雉、白、虎猫等という剛猫を集め、
世に言う様「国に虎族、家に鼠」という、鼠多く蔓延る。
猫無きが如くなり。世の鼠を滅ぼさんと謀りける。

「俺が言う事上にあるぞよ。合点か」
「左様、左様」


6

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さてまたこゝにふく鼠
といふ白ありて した
のしろねつみいふに
こんど猫又と
いふやつ せかいの
鼠をからんと
あまたのねこを
あつめ をしよせる
ゆふをふくねつみ
それこそいち
だいぢなり
とあまたの
鼠をあつむる
なかにも白鼠
赤鼠 ぶち鼠
なんきん鼠

はつか鼠
こまゝはし鼠
どぶ
鼠 などゝいふ
いつきとふせん
の鼠なり
猫ををそ
しとまち
ける

「ちうしん/\
といふとこ
ろがねづ
みだけ
ちう/\

「なんと /\/\


さて又ここに福鼠という白有りて、下の白鼠言うに、
「今度猫又という奴、世界の鼠を狩らんと数多の猫を集め、
押し寄せる」言うを福鼠「それこそ一大事なり」と数多の
鼠を集むる。中にも白鼠、赤鼠、斑鼠、南京鼠、二十日鼠、
独楽回し鼠、溝鼠等という一騎当千の鼠なり。
猫を遅しと待ちける。

「注進注進。と言うところが鼠だけ『ちゅうちゅう』」
「なんとなんと」


7

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「どぜう」「うなぎ」
「にしん」「かつぶし」

あんにたがわど
ねこ又をしきたる
さうほうたゝかいしが
ねこ又ぜいくつけう
のいてをすくり ねづみ
とりのたけのゆみをはり
さん/\゛にいたてける

まち事うけし
鼠ぜいほう/\
にはいぼく
なせり
ける

「いやこれ
はたまら
ぬ/\/\

「にやんのこと
もねへやつら

だはへ
あゝりや 

/\/\
かへせ/\/\
いやかへる
にをよ
ばぬ
にけろ
/\/\
/\/\

これでは
ぢうの
ねもで
ね にけ
ろ/\/\

 

案に違わず猫又押し来たる。双方戦いしが、
猫又勢屈強の射手を選り鼠取りの竹の弓を張り、
散々に射立てける。
まち事(?)受けし鼠勢、ほうほうに敗北なせりける。

「いやこれは堪らぬ堪らぬ」
「ニヤンの事もねえ奴等だわえ」
「あゝりやう(?) /\/\」
「返せ返せ返せ」
「いや帰るに及ばぬ逃げろ逃げろ」

「これではヂュウの音も出ね。逃げろ/\/\」


8

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ふく鼠かねて
はかりを
きし
さをのさ
きかん
ぶくろ
つけ
なんきん
はつか
などち
いさけれ
どはし
こければ
めい/\にを
つとり
さしもに

かちた
るね

ともかんぶくろ
かふせられあ
とじさへも
なせけり

「なんと
きめう
ごろやう

するめ
「虎」

「どつこい
しくじた

「しめこのうさ
きでなくね
こだ/\

「なんきん」
「はつか」
「あぶら」
「こまゝわし」

 

福鼠予ねて謀り置きし竿の先、紙袋付け、
南京、二十日等、小さけれどはしこければ、
銘々に押っ取り、然しもに勝ちたる猫共、
紙袋被せられ後退さえもなせけり。

「なんと奇妙ゴロニャウ(?)」
「占め子の兎で鳴く猫だ/\」
「どっこいしくじった」


9

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「鼠とり」
石見銀山
「いたずら助六 いなりかり」

かちほこ
たる猫かんふくろ

にはさん/\゛にまけ
むねんとをもい
いわみぎんざんの
かせいこい
いつてとなり
せめける ねつみ
とりにをそれ
ほう/\に
にけ ける

「おふ/\
 きんもつ/\」

「やれ/\たまらぬ/\
  みづかよふひ /\

「とんからし
「鼠」
「どぶ」
「なんきん」
「廿日」

勝ち誇たる猫、紙袋には散々に負け、無念と思い、
石見銀山の加勢乞い、一手となり攻めける。
鼠捕りに恐れ、ほうほうに逃げける。

「追う追う、禁物禁物」
「やれやれ堪らぬ堪らぬ。水の用意用意」


10

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こゝを
たいじ
とねつみ
はかりことを
もうけおふきなる
いぬはりこて
さきへをしいだせ
ばさすがの
猫もをそれ
ける

あり

「大根」

「あかりやう
/\/\

「なんと
きもがつぶ
れよふ

「福」
「米ひつ」
「とをしん」


「さかな」
「むきみ」

「犬とわを
それる
/\/\

「にけろ
/\/\

 

ここを退治(大事?)と鼠謀を設け、大きなる犬張子を先へ押しい出せば、
流石の猫も恐れける。

あり(書き損じ?)

「あゝりやう(?)/\/\」
「なんと肝が潰れる」
「逃げろ逃げろ」


11

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たい
しやうね
こまたやあものとも
おそれるな
いぬはりこ
なるそようつて
かゝれといへば
あまたの
ねことつて
かへしさん /\

にたゝかい
すでに
あやうき
とこ
ろへ
大こくてん
あらはれ
いで そう
ほうわぼく
ぞなせける
めぜたし
/\/\
/\/\/\

 

大将猫又「やあ者共恐れるな、犬張子なるぞよ、撃って掛かれ。」
と言えば数多の猫取って返し、散々に戦い、既に危うき所へ、
大黒天現われ出で、双方和睦ぞ為せける。めでたし、めでたし、
めでたし、めでたし、めでたし、めでたし。


12

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かない
あんせん
まもせ給ふ
めでたし
/\/\

廿日寅吉

 

 家内安全守せ給う。めでたし、めでたし、めでたし。
 二十日寅吉